信州イスラーム世界勉強会 e-定例会第3弾は、板垣雄三代表の「コロナ禍」に立ち会う視野に関する論評です!

コロナ危機の「目隠し状態」から脱け出して、広く世界を見渡そう
                                                 
信州イスラーム世界勉強会代表 板垣雄三


イスラーム世界を知るには、イスラーム世界を突き抜ける視野をもつことが必要です!


【A】  「コロナ禍」に立ち会う視野を拡げよう   参考資料(B・C)の解説を含めて
                                                                                                            板垣 雄三

私の日常生活の中で、日々ある一定時間は、イスラ―ム世界の「いま」を考えめぐらそうとして、世界のさまざまな方角から届く多様な分野の情報に目を通すことに、あてられる。たまたま、ワシントンDCにいるフリー(独立)のパレスチナ人ジャーナリスト、サム・フセイニ―がAntiWar.comに寄稿した「このウイルスはラボ(実験室)由来のもの?否、そうではないかも。だが、それはバイオ戦争に備える兵器増強競争の怖ろしさを暴露するものだ」という題の文章が目についた。
https://original.antiwar.com/shusseini/2020/04/24/did-this-virus-come-from-a-lab-maybe-not-but-it-exposses-the-threat-of-a-biowarfare-arms-race/
 中東出身で米国に住んでいるのだから、2001年9/11(同時多発テロ)事件後に連続して起きた炭疽(そ)菌事件〔ムスリムが書いたと見せかける手紙と炭疽菌胞子を入れた容器がTV局・上院議員などに送られ、22名の感染者の内5名が死亡し、10年かけたFBI捜査で軍の生物兵器ラボに関係する炭疽菌研究者の単独犯行とされた[当人は自殺]が、バイオテロの真相は疑惑のまま〕の社会不安のもと、イスラーム憎悪が激化、愛国者法による監視社会化やアフガン戦争・イラク戦争の苦い経験をしたサム・フセイニーが、今回の新型コロナウイルスのパンデミックも、バイオ兵器という視角から見るのは自然なことだ。まして、米・中両国で、それぞれ相手がこっそりバイオ戦争の引き金をひいたという陰謀説の非難を交わし合うことになっているのだから、私たちは日本国内の緊急事態をどうするかだけ考えていて済むことではない。
 サム・フセイニーは、米・中どちらかの主張に軍配を挙げるというのでなく、第二次世界大戦後の感染症研究や病原体研究が戦争と切り離せないものだったことに注意を払うのである。むろん、それを強力に先導したのは米国で、(日本の関東軍防疫給水部(いわゆる731部隊)の実験データや標本の入手に積極的だったように)バイオ戦争への態勢づくりを強化したのに対して、中国は朝鮮戦争での米軍のバイオ兵器使用問題(英国の生化学者ジョゼフ・二ーダムの調査)のように被害者の立場が濃厚だったのは確かだが、その中国もやがてウイルス研究では米国などとの協力が深まった。20世紀半ば以降を通観するにあたり、フセイニーが注目しているのは、以下のような仕事である〔どれも邦訳なし〕。
Seymour Hersh, Chemical and Biological Warfare: America’s Hidden Arsenal, Bobbs-Merrill, 1968.
 〔シーモア・ハーシュ『生物・化学戦争:米国の隠された兵器庫』 著者は辣腕の有名な調査報道ジャーナリスト〕
Susan Wright (ed.), Preventing a Biological Arms Race, MTT Press, 1990.
〔スーザン・ライト編著『バイオ兵器増強競争をやめさせる』 編者は科学史家、ミシガン大学教授〕
Francis A. Boyle, Biowarfare and Terrorism, Clarity Press, 2015.
 〔フランシス・ボイル『バイオ戦争とテロリズム』 著者はイリノイ大学国際法教授、パレスチナ問題・先住民の権利擁護〕
フセイニーが特に重視するのは、ウイルス研究において、インフルエンザ・ウイルスの〔空気感染性とか致死率強化とか新しい〕「機能獲得gain of function型」バイオ工学の実験が抱えている問題だ。人工的・操作的に、感染の仕方やプロセス、感染力や強毒性を変異させる。つまり、これがバイオ兵器開発の軍事研究となるのである。
The New York Times Editorial “An Engineered Doomsday”, 2012/01/07 〔「設計操作される終末の日」〕
https://www.nytimes.com/2012/01/08/opinion/sunday/an-engineered-doomsday.html
Ian Sample, Scientists condemn ‘crazy, dangerous’ creation of deadly airborne flu virus, The
Guardian 2014/06/11 〔「科学者は風に乗る命取り流感ウイルスの創造を〈狂気〉〈危険千万〉と非難」 この翻訳は、後出Cで読むことができる。解説はまもなくAの中で。〕
https://www.theguardian.com/science/2014/jun/11/crazy-dangerous-creation-deadly-airborne-flu-virus
こうして、危険度を極度に高めた人工のウイルス実験室株が外部に流失することがないよう、ラボの対外遮断・安全保障システムの設計と運用が、大きな課題となる。バイオ戦争の潜在能力が高まれば、バイオ安全保障の防衛能力強化が至上命題となるのだ。
生物兵器禁止条約(略称はBiological Weapons Convention、正式には「細菌兵器[生物兵器]及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」)は、1972年に成立した。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bwc/bwc/index.html 〔条約の文言は、和文・英文を選んで読むことができる〕
しかし、実質的には、米国をはじめ幾つもの国がバイオ兵器の開発・保持を行なっている。
Judith Miller, Stephen Engelberg and William J. Broad, U.S. Germ Warfare Research Pushes Treaty Limits, New York Times 2001/09/04, Section A, p.1 〔「米国の病原体戦争研究は条約の境界を押しまくる」〕
https://www.nytimes.com/2001/09/04/world/us-germ-warfare-research-pushes-treaty-limits.html
 軍縮・核廃絶分野での活動とともに生命科学とバイオ産業とを繋ぐ企業の責任者でもあるリン・クロッツは、ウイルス研究のバイオ安全レベルでBSL3やBSL4のラボで起きている病原体暴露事故の頻発を調査し警告していた。Lynn Klotz, Human Error in High-biocontainment Labs: A Likely Pandemic Threat, Bulletin of the Atomic Scientists, 2019/02/25. 〔「高度のバイオ安全基準に基づく封じ込め実験室におけるヒューマン・エラー:発生しそうなパンデミックの脅威」〕
https://thebulletin.org/2019/02/human-error-in-high-biocontainment-labs-a-likely-pandemic-threat/
 フランシス・ボイル〔前掲のイリノイ大学国際法教授〕は、機能獲得gain of function(GOF)型実験の危険性・反倫理性を批判してきた立場から、COVID-19を生物学兵器と認識する。武漢のウイルス学者たちが2015年ノースカロライナ大学との共同研究を開始して以来、中国で蝙蝠ウイルスのGOF研究が進められる一方、武漢のBSL4ラボの脆弱性も、米国同様、生じたと観る。だからCOVID-19の中国発の可能性を考える。サム・フセイニーが信頼するリチャード・エブライト〔ラトガース大の分子生物学者〕も、2002~04年のSARS段階から、中国の実験室株の封じ込めが破れたと疑うのだ。
https://www.uticaphoenix.net/2020/03/24/is-the-recent-corona-virus-covid-19-a-biological-weapon/
中国とオーストラリアとの間のGOF研究開発における連携も見落とすべきではない。
https://www.dailytelegraph.com.au/coronavirus/bombshell-dossier-lays-out-case-against-chinese-bat-virus-program/news-story/55add857058731c9c71c0e96ad17da60
いずれにしても、これまで見てきたような矛盾にもかかわらず、遺伝子操作の機能獲得方式で、人工的変異の積み重ねによる攻撃的バイオ兵器の開発が、他方それと対抗するために、同質の作業による〔ときには攻撃兵器をもたないためという主観的意図をさえ含む〕防衛措置としての開発を発動させる。すなわち、攻撃と防御が/軍事と民生が/殺人と命がけ医療が/パンデミック化操縦と鎖国管理が/一つの行為の表裏として実現してしまうかのように見えることになる。GOFで脅かされれば、GOFでにらみ返す。ウイルスの性能イノベーションという加工=GOFが、そのデュアル・ユース(二重用途)性を装う。これは、核抑止力と似ている。核の脅威に対して、核の傘や核武装で、さらに核兵器の近代化や小型化で、すなわち核には核をもってという「抑止」論の泥沼が、バイオ戦争に処するためのウイルス操作の連鎖と、通じ合うのである。
ウイルス感染症の場合は、特殊な社会的コンテクストが形成されてきた。それは21世紀になってことさら顕著なものになった。短い間隔でパンデミック化の傾向が生じ、この循環を待ちながら製薬大資本(ビッグ・ファーマ)が世界大の医療および公衆衛生上の活動の一環として各国家からの拠金を受けつつ巨大な企業利益を上げるという構造。パンデミック対策の世界事業が、世界保健機関WHOを中心に、20世紀後半からの米国国際開発庁USAIDやEcoHealth Allianceを上回る形で、〔ワクチン接種普及・価格決めの〕ワクチン・免疫グローバル同盟Global Alliance for Vaccines and Immunization (GAVI、創立2000年)と〔ワクチン製造支援の〕感染症流行対策イノベーション連合Coalition for Epidemic Preparedness Innovations(CEPI、設立2015年)というワクチン・治療薬関係団体とこれを支えるビル&メリンダ・ゲーツ財団Bill & Melinda Gates Foundationおよび世界経済フォーラムWorld Economic Forum (WEF)からなる基本組織によって動かされている。パンデミック対策を成り立たせる上では、各国政府の役割は決定的だが、メディアの危機感醸成力は大きい。
日本では、2020年度予算でパンデミック対策は盛り込まれず、医療崩壊の危機が語られつつ医療体制再編のためのベッド数減のための費目が計上されているといった齟齬が見られたが、第1次補正予算で事態への具体的対応の裏付けが示された。上記のワクチン開発対応の比重、CEPIやGAVIへの拠出、等について、以下の表を検討してほしい。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/siryou/pdf/20200407_coronakenkyu.pdf
日本製薬団体連合会(日薬連)と製薬産業政治連盟の動きも関心を引く。
Bの資料は、カナダのGlobal Researchの主宰者の論考、Prof. Michel Chossudovsky, Corona-virus “Fake” Pandemic: Timeline and Analysis, 掲載2020/04/08. を全訳したものである。
https://www.globalresearch.ca/ncov-2019-coronavirus-time-line/5705776 〔アーカイブでは若干の改訂があり得る〕
その内容は、日本でもネット上を主に部分的紹介が行なわれたようだが、海外でと同じく、新型ウイルス流行のシミュレーションが昨年10月に実施されたことと、中国武漢で蔓延が始まったのは10月武漢市で開かれた軍事スポーツ競技大会に米軍人・国防省関係者がウイルスを持ち込んだからだとの見方とから、裏ニュースの暴露・露見としてであった。米政権や共和党トム・コトン上院議員は、相変わらず「陰謀論」のレッテルを貼って切って捨てる。しかし、シミュレーションも軍事スポーツ大会も否定しようのない事実で、世界経済フォーラムや米国防省の記録がある。われわれとしては当時オリンピックを翌年に控えていた日本の政府・東京都・メディアがビル・ゲーツの新規事業立ち上げの予期や世界の健康安全の危機に関連して当然重大な関心を寄せるべき事柄をまったく無視したことの意味や背景を検討すべきだ。そして、ショスュドフスキーの真の問題意識は、戦乱・災害・格差・不正義・事故・自死による世界の死者・犠牲者・被害者の厖大な数とその事情・経緯、またそれらへの取り組みと比較して、パンデミックへの対応における作為性・劇場性・受動性への告発・批判・反省にあることを受けとめるべきではないか。混乱・迷走は、全面的な社会変容と思想変革とへ転換されなければならない。
Cの資料は、The Guardianのscience editor, Ian Sample執筆による Scientists condemn ‘crazy, dangerous’creation of deadly airborne flu virus, The Guardian, 2014/6/18.の和訳である。
https://www.theguardian.com/science/2014/jun/11/crazy-dangerous-creation-deadly-airborne-flu-virus
 近年のウイルス研究の歴史の中で、2012年、オランダはロッテルダムのエラスムス医療センターに属するウイルス学者ロン・フーシエルRon Fouchierと米国ウイスコンシン大学マディソン校の獣医学教授でウイルス学者の河岡義裕Yoshihiro Kawaokaとが、鳥インフルエンザのH5N1の株に機能獲得GOFを実現することに成功し、その結果をそれぞれScience誌、Nature誌に発表し、その評価をめぐって学界を賛否二つの陣営に二分する論争を巻き起こしたことが特記されている。ここに訳出したものでは、河岡の仕事に対する懸念や批判が中心となっている。そして、それへの河岡の立場の表明や批判への反批判も、彼の仕事を高く評価する意見とともに、記録されてはいる。読者は、現在のCOVID-19問題と向き合いつつ、ここで自然に対する根本的な態度選択、「いのち」について考える姿勢の確認、社会の信頼のシステム・制度のもとで安全に関わる責任のとり方の原則確認を、迫られるだろう。現在、河岡氏〔東大医科学研究所感染症国際研究センター長〕は、新型コロナウイルス感染症政府対策会議の専門家会議メンバーであり、「コロナ専門家有志の会」のメンバーとして市民向けのサイトの内容にも責任を負っている。https://note.stopcovid19.jp/
 私として、いま、考えなおさねばならない問題を挙げてみれば、以下のようになる。
1)「抑止力」論的な思考法
2)「Dual use」の技術論
3)何事も「営利」に結びつけようとする世渡り
4)「いのち」を感じとらない暮らし、働き、身体運動
5)人間のマインドコントロールと内面破壊

「コロナと戦う」と言う人は、闘わなければならないものから目を背けている。


【B】  コロナウイルスCOVID-19の「しつらえ」パンデミック:時系列表と分析 2019年9月~2020年4月

ミシェル・ショスュドフスキー グローバル・リサーチ(モントリオール)主宰者、オッタワ大学名誉教授(経済学・現代世界研究)
板垣雄三 訳 訳注は〔 〕で示す

背景
 2020年1月30日、世界保健機関(WHO)は、中国でウイルス性肺炎を発症する新コロナウイルス(2019-nCoV)に関連して「国際的に憂慮される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。そのウイルスの急激な発現は、中国東部 湖北省の1100万の人口を擁する武漢市で集中的にみられた。
 1月30日の宣言決定に先立つ週には、WHOの緊急事態委員会で委員たちの見解は多様に異なっていた。委員会内部は明らかに分裂していたのだ。1月30日、専門家らの一致した意見の支持をまだ欠くところで、その包括的決定が下されたときには、このコロナウイルスの爆発感染は中国本土に限られていた。その時点で、中国の外側での発症ケースは150例(米国6例、カナダ3例、英国2例、その他)に過ぎなかった。すなわち、64億人(地球上の78億人から中国の14億人を差し引いた数)の中の150人の発症が確認されただけだったのである。

感染のリスクとは? 実質的にゼロ
 WHOは世界の世論に向かって、状況を確認しなおし周知させる行動をとらなかった。それどころか、それとまったく反対の動き方をしたのである。国際的に懸念すべき公衆衛生上の緊急事態の警報の本来の精神より、むしろ「パンデミックを恐れよ」の掛け声の独り歩きがはじまった。
 あからさまなパニックと不安とを下支えしたのは、メディアによる注意深く設計された一連の欺瞞的誘導情報キャンペーンだった。
 これはほとんど同時に、経済的な配置転移(ディスロケーション)〔トランプ大統領が中国・米国間の人の往来の遮断を決定、米中経済戦争緊迫化の心理助長〕につながった。すなわち、まず中国とのあいだの貿易と運輸とを頓挫させる危機で、航空・海運の大企業がもろにその影響をこうむった。欧米諸国で中国系の人々に対するヘイトの風潮が髙まるのは、2月後半の株式市場の崩壊と、さらに数え切れぬ企業倒産を結果する旅行業界の破綻とに、引き続いて起きてくるのである。
 この危機の複雑性とその衝撃とは、それらに的(まと)をしぼった検討が必要であり、注意深く分析されなければならない。
 われわれが取り組む問題は、メディアの流す欺瞞的誘導情報によって支えられ、かつ、中国経済を掘り崩そうとするトランプ政権の狙い定めた意図と抱き合わせの「経済戦争」である。ただし、進行中の経済的編成替えの狙いの対象は、中国に限られるものではない。
 取り組まなければならないものに、重要な公衆衛生上の懸念があるのは、もちろんだ。しかし、WHOの事務局長の行動の仕方を動機づけたものは何だったのか? WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長〔1965年ソマリア生まれのエチオピア人、公衆衛生研究者、保健相・外相を歴任、2017年着任〕による1月30日の歴史的決定の背後でこれを推進した存在とは、誰だったのだろう。
 (下記の時系列表(タイムライン)に基づき)導き出されるわれわれの分析が明らかにするのは、ビッグ・ファーマ〔大手製薬資本〕/ウォール街〔金融界〕/米国政府の秘密情報機関と連携した巨大企業法人群/の権勢漬け利害こそ、WHOに〔グローバル規模の〕包括的決定をさせる動因だったということである。
 関心をもつべき要(かなめ)は、ビッグ・ファーマ〔大手製薬資本〕とビッグ・マネー〔巨大金融資本〕の同盟がトランプ政権のお墨付きを得ていたということ。1月30日にWHOの指揮のもとでニセのパンデミックを船出させるという決定は、すでに1週間早くダヴォスの世界経済フォーラムWEFで取り決められていたのであった。メディアの活動は、すでにそこであからさまなパニック不安を拡げはじめることになるのである。
 (下方にスクロールして、われわれの時系列表で、こうした事件がどのように展開したか、読み取られたい。)

しかし、WHOがこのように行動する決定をしたのは、これが初めてではない。
2009年4月H1N1豚インフルエンザ・パンデミックをめぐる当時の異常な状況を思い起こせ。
 恐怖と脅迫の雰囲気がいきわたっていた。データが操作されていた。
 不十分で不完全なデータに基づいて、〔当時の〕WHO事務局長は、それにもかかわらず、権威をもって予言した。これから2年余のあいだに、20億人もの人々が罹患することがあり得る、それは世界人口のおよそ3分の1だ、と(2009年7月に欧米メディアが伝えたWHO発表)。
 それは、WHOのマーガレット・チャン事務局長〔陳馮富珍(チャンフォン・フチャン)、1947年生まれの香港の医師、香港衛生署長として1997年鳥インフルエンザや2003年SARSの対策を指揮し、03年WHO勤務、07~17年事務局長〕が応援していたビッグ・ファーマにとって、幾十億ものケタの棚ぼた金もうけの話だったのだ。
 2009年6月、マーガレット・チャンは次のように言明した。
「専門家によるエヴィデンス評価(アセスメント)に基づき、インフルエンザ・パンデミックの科学的諸基準は満たしている。それゆえ、私はインフルエンザ・パンデミック警報レヴェルをフェーズ5からフェーズ6に引き上げる決定を下した。世界は、今や、2009年インフルエンザ・パンデミックの起点に立つ。」(2009年6月11日、WHOマーガレット・チャン事務局長の記者会見)
専門家の評価とは、いったい何のこと?
その後の声明のなかで、彼女は次の確認をおこなった。
ワクチン製造会社は、ベストのシナリオどおりに行けば、49億人接種相当分を生産できるだろ
う。富める国も、貧しい国も、限られた供給分を争奪するから。(2009年7月21日、WHOマー
ガレット・チャン事務局長の発言、ジュネーヴ発ロイター電が引用)
【写真挿入】
国連バン・キムン事務総長(右)がWHOマーガレット事務局長(中央)の話に耳を傾ける。2009年5月19日、ジュネーヴのWHO本部にて。ロイター/クリストファー・バルク
 グラクソ-スミスクライン、ノヴァルティス、メルク、サノフィー、ファイザーその他ビッグ・ファーマのワクチン製造会社にとっては、財務上、巨利が転げ込むチャンスの到来だった。〔このインフルエンザの流行終息後、各国政府の援助が結果したワクチンの生産余剰は、ウイルスの変異もあり、ワクチンの大量破棄や低開発国への詐欺的押付けへとつながり、WHOの初期対応は、各国衛生当局・大手製薬会社・一部疫学研究者の癒着とともに、きびしく批判されることとなり、この問題の調査や検証もなされた。Alex Newman, Europe to Investigate WHO’s ‘False Pandemic’ Scandal, The New American, Jan. 5, 2010. Abelin A. et al., Lessons from pandemic influenza A (H1N1): The research-based vaccine industry’s perspective, Vaccine Vol. 29, Issue 6, Feb. 1, 2011, pp. 1135-38. 等.〕

コロナウイルス 時系列表
2019年9月 米国でもWHOでも公式見解は、問題のコロナウイルスが湖北省武漢市に起源をもち、最初に発見されたのは2019年12月末だったとするが、これに対し、中国および日本のウイルス学者たちは疑問視して米国起源のものと考えており*、また台湾の著名なウイルス学者〔名前は示されないが、著者が参照しているとみられる 在上海のGlobalresearch.ca寄稿者、复旦大学客員教授の Larry Romanoffによる記述の関係情報から、陽明大学薬理学教授・台北市議員の潘懷宗と推定される〕は ヨリ早い段階で出現していたと主張、「われわれは2019年9月に目を向けなければならない」と述べる。
*〔著者が日本のウイルス学者と言っているのは、2020年2月21日にテレビ朝日が、過去数カ月間にインフルエンザで死亡
  したとされた米国人14,000人のうち新型ウイルスによる肺炎患者が含まれていた可能性を米国CDCが認め、検査体制の
見直しが開始されたと報じたことの誤解と思われる。中国では、人民日報の情報プラットフォーム「人民網」が即日これを伝
え、ミニブログサイト「新浪微博」で拡散されて評判となった、著者はLarry Romanoff, COVID-19 may have originated from
the US? Japanese TV broadcast., Globalresearch.ca Feb. 24, 2020. を誤読したと考えられる。〕
2019年10月18—27日 武漢2019:世界軍事スポーツ競技大会
国際軍事スポーツ会議CISM(Conseil international du sport militaire)が4年ごとに開く
第7回Military World Games(中国語では世界軍人運動会)の期間中に、問題のウイルスが「どこか外国の発生源から」中国に持ち込まれてしまうことがあり得た可能性が、(確実な証拠の裏付けはないものの)中国のメディアのほのめかすところである。
109ヵ国から、合わせて1万名の兵士が参加。
この10日間の行事に、米国から約200名の軍人が参加。
〔140ヵ国、9308人のアスリート参加、米国からは172人の大選手団、という情報がある。
ウィキペディアCISM武漢2019 https://en.wikipedia.org/wiki/2019_Military_World_Games
米国国防省の関係サイト https://www.defense.gov/Explore/Spotlight/CISM-Military-World-Games/
10月18日 イベント201、ニューヨーク コロナウイルスnCoV-2019 流行の模擬実験(シミュレーション)と非常事態準備特別対応チーム ジョンズ・ホプキンズ大学健康安全保障ブルームバーグ・スクール
ビッグ・ファーマ及びビッグ・マネーによる模擬実験演習 後援:世界経済フォ
ーラム、ビル&メリンダ・ゲーツ財団
  コロナウイルス感染症流行の模擬実験演習の結果は死者6500万人。金融諸機関の利害を
代表する世界経済フォーラムWEFとビッグ・ファーマを代表するゲーツ財団とが資金負担。
  組織者サイドの説明
「 《イベント201》と呼ぶパンデミック卓上演習は、ジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター
がホストとなり、世界経済フォーラム、ゲーツ財団、等をパートナーとして実施された。シナリオ
としては〈架空のコロナウイルス・パンデミックの模擬実験〉であったが、それは予測作業では
ないことが明言されていた。その代わり、この演習は、非常に激甚のパンデミックが発生する
ことを前提として、それへの準備態勢ならびに挑戦的対応に力点をおいた検証に役立つべき
ものとされた。[そこで] nCoV-2019の激発が6500万人の死者を予言しようとするものでは
ない。この卓上演習では仮の新型コロナウイルスを導入していたが、架空のウイルスに
よる影響の可能性に関する模擬実験のためのデータ入力は、nCoV-2019の場合と同等
ではない。」
nCoV-2019の数次発生の演習は実際に起きたことと一致していた[本論文の著者は、これを裏付ける
情報は提示していない]。イベント201のコロナウイルス・パンデミックの模擬実験(シミュレーション)
では、金融市場の15%暴落という数字が出ていた。このイベントの組織者・スポンサーによれ
ば、それは予言だったのではない。
民間部門の参加イニシャティブ: 参加者で注目されるのは、企業幹部、メディア、財団、金融
機構、銀行、ビッグ・ファーマ(大手製薬企業)〔ルフトハンザ、マリオットホテル、NBCニューズ、エーデルマン、
ゲーツ財団、UPS財団、国連財団、シンガポール通貨庁、世界銀行、オーストラリア・ニュージ―ランド銀行、ジョンソン&ジ
ョンソン、ヘンリ-・シャイン、等の代表〕。そして、CIA、CDC(米国疾病管理予防センター)、疾病預防控制
中心(中国のCDC)、ナイジェリア疾病管理センター、からの代表。米・中のCDCからの参加者
のほかには、政府あるいはWHOからの保健関係専門家の公務員は皆無〔ナイジェリア人疫学者に
触れない理由は不詳〕。この模擬実験演習の「イベント201」は、武漢における世界軍事スポーツ競技
大会2019の開会式と、まったく同日に行われたのだった。
〔以下のURLから「Event 201」の概要が分かる。
https://www.centerforhealthsecurity.org/event201/
https://www.centerforhealthsecurity.org/event201/about
https://hub.jhu.edu/2019/11/06/event-201-health-security/  ヴィデオが実況の雰囲気を掴むのに能率的
https://www.weforum.org/press/2019/10/live-simulation-exercise-to-prepare-public-and-private-leaders-for-pandemic-response/
https://www.youtube.com/watch?v=Vm1-DnxRiPM
https://www.youtube.com/watch?v=AoLw-Q8X174  〕
2019年12月31日 中国湖北省武漢市で肺炎発症の諸例が検出され、報道された。
2020年1月1日 中国保健当局は、欧米メディアが武漢華南海鮮卸売市場で売られた野生
動物がウイルスの出所であるのではないかと報じたことを受け、同市場を閉鎖する。この初期
判定に対しては、その後、中国の科学者たちから否認の声が上がった。
2020年1月7日 中国当局が1月7日、分離された「新型ウイルスを特定」する。このコロナ
ウイルスはWHOにより2019-nCoVと命名されるが、それは、前年10月18日に世界経済
フォーラム、B. & M.・ゲーツ財団、ジョンズ・ホプキンズ大学が採用した名前と、まったく同じだ
った。[2019を前置するか後置するかの違いがある。]
2020年1月11日 武漢市衛生健康委員会、コロナウイルス感染による最初の死者が出たと発表。
1月22日 WHOでは、緊急事態委員会の委員の間で状況が「国際的に憂慮される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を構成するものであるか否かについて、意見が分かれる。
1月21~24日 スイスはダヴォスの世界経済フォーラムにおいて、ワクチン開発計画のための「感染症流行対策イノベーション連合」(CEPI) が主催する協議。CEPI は世界経済フォーラムおよびB. & M. ゲーツ財団が協力機関である。CEPI の支持により、シアトルに本社をもつ米バイオ企業モデルナ社が、米国立衛生研究所(NIH)所属の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)ワクチン研究センター(VRC)の共同開発協力を得て、2019-nCoVに対抗するための遺伝情報伝達メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの製造にあたることとなろう。
CEPI の公表:
  ✱本日われわれは、新型コロナウイルス nCoV-2019に対するワクチン[複数]開発のため、三つのプログラムへの資金提供を公表した。われわれは、出現しつつある脅威に対処するワクチン[複数]開発をスピードアップするため考案される先駆的技術に支援を行なっていく。
  ✱リチャード・八チェット CEPI 最高経営責任者CEO 声明:
   「新型コロナウイルスの急速なグローバル拡大を考慮すれば、世界が必要とすることは速やかな行動であり、この病気への一致した取り組みです。私たちは、この事業がワクチンの開発に意義深く重要な前進をもたらすものとなることを希望します。」
 本論考の著者ノート:
   2019-nCoVワクチンの開発がダヴォスで告知されたのは、1月7日の〔命名〕発表の2週間後で、1月30日WHOによる公式の緊急事態宣言に先立つこと、わずか1週にも満たぬ時点だった。世界経済フォーラム+ビル・ゲーツ財団+CEPI のワクチン製造告知はWHOの動きに先行した。
1月30日 ジュネーヴ: WHO事務局長が感染爆発状況は「国際的に憂慮される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)に相当すると判定。この決定は、中国以外で150名の感染確認を基礎になされた。[中国以外で]人から人への感染の最初の事例が報告されたのは、米国では6名、カナダでは3名、英国で2名だった。
  WHO事務局長は、ビル&メリンダ・ゲーツ財団、ビッグ・ファーマ、世界経済フォーラムの支援を得ていた。これを暗示するものは、緊急事態宣言が出される伏線として、1月22日ジュネーヴでのWHO緊急事態委員会と重なり合うように、ダヴォスでは21~24日世界経済フォーラムが開催されていたことだ。ダヴォスの会議には、WHOのテドロス事務局長とビル・ゲーツとが揃って出席しており、ビル・ゲーツは彼の財団が以後10年にわたりワクチン生産に対する100億ドル拠出することをアナウンスしたのだった。
1月30日 〔世界経済フォーラムに合わせダヴォスで実施された〕パンデミック模擬実験演習〔シミュレーション・エクササイズの続き〕が効力を発揮しはじめる。前年10月18日のジョンズ・ホプキンズ大の演習に参加していたのと同じ大企業や財団・組織が、WHOの公衆衛生緊急事態宣言の実施を支援する現実のアクター[当事者]となった。
1月31日 WHOの世界的緊急事態が始まった翌日、トランプ政権は最近14日間に中国を旅行したことがある外国人の入国を拒否すると発表。これはただちに、航空運輸、中・米間貿易はもちろん、旅行・観光業の危機の引き金を引き、実質的な破産と言うまでもなく失業の拡大へと導くものであった。ただちに、広く欧米世界で、反中国人キャンペーンに火をつけるものでもあった。
2月初旬 コロナウイルスの頭字語は、前年10月ジョンズ・ホプキンズ大の模擬実験演習「イベント201」で用いられた名前がやがて2020年1月初旬に新型コロナウイルスと同定される〔表記だった〕 nCoV-2019から、COVID-19へと変換される。
2月24日 感染症流行対策イノベーション連合CEPI の支援を受けたモデルナ社が、試験的なmRNA COVID-19ワクチン(mRNA-1273と呼ばれる)の人体の臨床試験に向けた準備が整ったと、発表した。
2月28日 大規模なワクチン接種期待キャンペーンが、WHO事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイェソス博士によって告知される。
  このキャンペーンの背後にいるのは誰か:感染症流行対策イノベーション連合CEPIと連携した大手製薬グラクソ‐スミスクライン社だ。それは、10月18日の模擬実験演習のスポンサーだったゲーツ財団および世界経済フォーラムとも提携している。ワクチン開発キャンペーンは、WHOの緊急事態宣言を先導し、1月21~24日ダヴォスの世界経済フォーラムにおいて初の鬨の声を挙げた。
2月後半 株式市場の相場激動。 ビッグ・ファーマの株価急騰、3月初めにかけて世界的規模での旅行業界にとって破滅的な結果。
2月末 世界的規模でウイルスの多数の国々への伝染の第二波。
2月末~3月初め 中国:罹患者の50%以上が回復し、退院する。3月3日現在では、中国で49,856人がCOVID-19による症状から回復した。中国では[この段階で]確認された患者の数は30,448人となる。確認された罹患者総数は80,304人なので、80,304−49,856=30,448という計算になる(WHOのデータ、2020/3/3)。欧米のメディアは中国の回復者の状況については報じていない。
3月5日 WHO事務局長は、中国以外では33ヵ国で2055人の感染症例の報告があることを確認。その約80%が、韓国・イラン・イタリアに集中している状況が続いていた。
  以上の数字が示唆していたのは、われわれがグローバルな健康安全への脅威の緊急事態に直面していたのではなかったことだ。感染の蓋然性は低く、また中国での経験に基づけば、ウイルス感染症の治療は効果を挙げていた。
3月7日 米国:罹患者・治癒者合わせて確認された件数が3月早々の430人台から600人余に上昇(3月8日)。3月をつうじて急速な増加が見られる。
  ただし、これをインフルエンザBウイルス関係の数字と比較すること:米国疾病管理防疫センターCDCの2019-2020年推計ではインフルエンザの患者数は少なくとも1,500万人、内14万人が入院し、死者は8,200人である。
3月初旬 IMFと世界銀行が救援に動く。WHO事務局長は加盟国に対し、世界銀行ならびに国際通貨基金IMFが、保健システムを安定させ感染症のもたらす経済的打撃を緩和するため活用する基金を出すことになったと、通知した。これは、COVID-19[出現]に対する新自由主義的「解決」の提案である。世界銀行は、発展途上国の対外債務の積み増しを進める「援助」としての120億ドルの提供を約束した。
3月7日 中国:パンデミック[の中国局面] ほとんど終わる。中国で伝えられる新しい罹患ケースは2ケタに。3月7日に記録されたのは99例。湖北省の外側で発生した新しい感染例は、すべて〔外国から〕「輸入された感染事例」に分類され、そのデータの信憑性は立証されている:確認された99例のうち74例は湖北省内の感染だが、他の24例の新規感染すなわち甘粛省の17例・北京の3例・上海の3例・広東省の1例は国外からもたらされた。
3月10~11日 イタリアで都市封鎖(ロックダウン)。EUの他の数か国がこれに続く。EU内で展開する3万名の米軍が、ロシアを敵と想定する「ヨーロッパを防衛せよ」軍事演習を実施。
3月11日 WHO事務局長が正式に COVID-19パンデミック を宣言する。1月30日の緊急事態宣言は、中国本土の外側でパンデミック〔の可能性〕を公式には確認せず行なっていたことに留意が必要。
3月11日 トランプ米大統領、英国を除くヨーロッパ諸国からの大西洋横断航空便の運行すべてを爾後30日間停止することを命令。これと同時に、航空会社の株式暴落と金融不安定の新たな荒波が生じる。西欧の旅行業界には挫折をもたらすインパクト。
3月16日 モデルナ社のワクチンmRNA-1273、ワシントン州シアトルで45名のボランティア
  により幾段階かのテストが実施される。この開発計画は2月早々に出発していた。「このワク
チンが免疫応答を引き出すか、安全か、はまだ分からない。だから、試してみているのだ。そ
れを広く人々に与えてよいとか大丈夫だとか言う段階ではまだない。」と(〔製薬のサノフィ社にいた
ワクチン研究者で、2019年10月からの状況の展開のもとでmRNAの開拓研究を買われCEPIに移ったニコラス・A・C・〕
ジャクソンは言う。〔Nicholas A.C. Jackson, et al., The promise of mRNA vaccines: a biotech and industrial
Perspective, Vaccines 5, 11 (2020).〕
3月21日 米国務長官マイク・ポンペオは、ホワイトハウスから米国民への演説で、COVID-19はライブの軍事演習だと述べた。「これは天罰などと関係ない。…物事は前に進んでいく。——われわれはここでチャンとやらなくちゃならない演習のナマの現場にいるのだ」、と。トランプ大統領は渋い嫌味な顔つきで、「君には、皆で知っておこうということが、ほかにないのか」と答えた。
4月8日 欧米メディアが先導する恐怖を煽るキャンペーン。いわゆる「感染確認件数」の著しく急激な増加。この日、WHOに集約されたのは、COVID-19の感染確認件数1,282,931、死者
72,776だった。感染確認件数への高まる疑問。米国疾病管理防疫センターCDCによるカテゴリー分類と統計的推定とにおける失敗〔3月11日下院公聴会でR. レッドフィールド所長は、インフルエンザによるとされた死亡者で、死後にCOVID-19感染者だったことが判明する事例があることを、認めた〕。
3月~ 4月 惑星(地球)規模のロックダウン(独房監禁)。 破滅的な経済的・社会的結果。
  その経済的・社会的インパクトは、コロナウイルスに[直接]帰せられるものを、遥かに超え出ている。以下は、グローバルな過程の中から選んでみた諸事例である。
 ✦米国における厖大な失業と一時的解雇。1,000万人以上の労働者の失業給付請求手続き。
 ✦インドで、21日間のロックダウン(都市封鎖)が飢餓と絶望の波を惹起し、全国土の数百万のホームレス・出稼ぎ労働者に影響が及ぶ。ホームレスにロックダウンは禁物:貧しすぎて食べられない。
 ✦ラテンアメリカおよびサハラ以南アフリカの貧困化は、筆舌に尽くしがたい。都市人口の大部分にとって、世帯収入は文字どおり消滅してしまう。
 ✦イタリアでは、旅行・観光業の不安定化は、破産と失業者増大を結果している。
 ✦多くの国で、市民が警察の暴力の犠牲となっている。ケニヤと南アフリカで、都市封鎖への抗議に巻き込まれた市民5人が警察に殺害された。
結論的所見
 われわれが扱っているのは、経済的・社会的・地政学的に広範な含意をもつグローバル危機の複合体である。
 われわれが〔ここに〕提供しているのは、事実に基づく情報とともに、「コモン・センス」の〔凝集〕要約形式による分析である。
 重要なことは、COVID-19を広闊な拡がりをもった討論の対象とすること、そして「公式の解釈群」を説得力ある強力な挑戦に曝すこと、である。
 われわれは、読者の方々に、この論文をGlobalResearchに載った他のCOVID-19関係の諸論文ともども、世に広めてくださるよう、お願いする。
嘘が真理(まこと)になるとき、後(あと)戻りはできなくなる
著者が2020/3/19ボニ・フォークナーとの対談Guns & Butterを整理し4/8 GlobalResearchに掲載したもの。〔 〕は訳者補足。

【C】 科学者は風に乗る命取り流感ウイルスの創造を〈狂気〉〈危険千万〉と非難
イアン・サンプル ザ・ガーディアン紙サイエンス・エディター
The Guardian, Wed 11 June 2014
訳:板垣雄三 〔 〕内は訳者の補足説明または訳注

 科学者たちが、反対者らから〈狂気の沙汰〉というレッテルを張られた実験により、いのちを脅かすウイルスを創造した。それは、推定5,000万人を殺した1918年スペイン風邪の菌株にすこぶる近似したものだった。
 米国の研究者たちが言うには、いま野鳥のあいだを動き回っているウイルスからひき起こされる公衆衛生上のリスクを理解するために、この実験はきわめて重要とのことである。
 ウイスコンシン大学マディソン校の科学者らは、野鳥インフルエンザ・ウイルス株の破片から問題のウイルスを組み立てるのに、逆遺伝学reverse geneticsと呼ばれるテクニックを用いた。
 ロイヤル・ソサイエティ〔英国王立学会〕元会長で英国政府の主席科学顧問だったこともあるメイ卿〔オクスフォードにゆかりの貴族、生物学者のロバート・マックレディ・メイ 1936~2020. 4月28日死去〕は言う、「総体的にとてもとても危険。そう、危険があると言っても、動物の内部で現にそこから出現してきた形態のウイルス〔複数種〕が、なのではなく、とてつもない野心家たちの実験室からそれが出現してきたということが、だ。」、と。
 インフルエンザ・ウイルス〔複数種〕は野鳥の集団〔複数〕の中を自由に動き回っている。その多くがニワトリ、アヒル、その他の鳥にとどまっているが、ときに、いくつかの系統のものに変異が生じ、人間を感染させる形態のものとなる。H5N1流感の菌種は2003年以降少なくとも386人を死亡させさせた(WHOの数字による)。1918年のスペイン風邪も鳥起源のものと考えられている。
 Cell Host and Microbe誌 〔2007年発刊の微生物学研究分野の学術誌〕に発表した論文で、河岡義裕は、彼のチームが多種の鳥インフルエンザ・ウイルスを分析した結果、数種の菌株から1918年流感ウイルスを構成したものにきわめて類似した遺伝子を見つけ出した、と書いている。彼のチームは、それら鳥流感ウイルスの遺伝子を単一の新しいウイルスの中に結合させて、1918年の人間のスペイン風邪ウイルスとはわずか3%異なるだけの、新しい病原体を創ったのであった。
 この新しく創られたウイルス―同チームが創った数種のうち最初のもの―は、普通の鳥インフルエンザ・ウイルス〔複数種〕よりマウスやフェレット〔飼養イタチ〕に対して遥かに有害ではあったが、1918年株ほどには危険でなかった。フェレット〔複数〕のあいだでは拡がらず、死んだ個体はまったく無かった。科学者たちはウイルスに変異を起こさせる実験を続け、どのような変化が拡大を起こすか観察した。その後の7回の変異を経て、彼らはホンの小水滴〔複数〕で動物から動物へ容易に拡がる危険度の高いヴァージョンに到達した。同じようにして、流感は人間のあいだで拡がる。
 ウイスコンシン大マディソン校のハイセキュリティ・ラボでの研究を率いた河岡は、作業のハイライトは、野鳥集団〔複数〕の中で見つかる流感ウイルスがどのようにして人間に適応しパンデミックを引き起こさせる潜在力を得るか、ということだったと語った。
 追跡調査の実験をかさねて明らかになったことは、2009年の豚インフルエンザ・ウイルスに対するワクチンと抗ウイルス剤タミフルとが、問題の新しいウイルスに対して有効なものとして使えそうだということだった。「これは、感染状況監視(サヴェイランス)とパンデミック対策整備(プリペアドネス)に関して政策決定をする人たちにとって重要な情報です」と、河岡はザ・ガーディアン紙に対して指摘した。
 その仕事は、科学者コミュニティを分断してきた一連の論争を惹起する研究の歴史の中で、最新の位置を占めるものである。一方のがわに、安全なラボの中で危険なウイルスを創りながら、それは既存の株系列が人類を危険にさらす脅威をもつものに転化するかも知れない変異の可能性を学びとろうとする作業なのだという希望を表明する研究者たちがおり、反対がわに、そのような作業は人びとを保護することにほとんど或いは全然役立たず、それどころか全人類をヨリ大きな危険に投げ込むものだと議論する研究者たちがいるのである。
  ハーヴァード大学公衆衛生学部の疫学教授〔で伝染病力学研究センター所長の〕マーク・リプシッチは言う、「これは、好むと好まざるとにかかわらず、感染力ある新型ウイルスを創ろうとする潮流の高まりを合図するもの。そこでは公衆衛生の強靭で理性的な精神原理が欠けています。これは、仮に、もっとも安全とされる実験室で行なわれるとしても、リスキーな活動です。科学者は、その仕事がいのちを救うことを可能にするという強力な証拠がない限り、やみくもにそのような冒険をすべきではありません。この〔河岡さんの〕論文には、そうした証拠の提示がありません。」、と。
 リプシッチは、すでに前月〔2014年5月〕公表した論文で、河岡がやったような実験〔複数形〕は、高度に安全が守られたラボから、もしウイルスが1個でも脱出するか意図的に放出されるかすれば、破滅的なパンデミックを爆発させかねない、と論じていた。
 しかし、河岡は自分の仕事を弁護して、批評家たちには、危険なウイルス〔複数種〕に関する彼や他の仲間の仕事がもつ衝撃〔的価値〕を評価する力がなかった、と言った。「H5N1[鳥インフルエンザ]ワクチンを、われわれのH5N1論文が発表されるまで、貯蔵しておくことの有用性について、議論があった。同様に、その論文は抗インフルエンザ薬剤の備蓄を支持してもいる。〔われわれの〕この仕事が「いのちを救うことにとっての利益」でないのなら、それにあたるものは何だ?」と、彼は言うのである。
 危険なウイルス〔複数種〕をそれらの働き・挙動を理解するために創っている諸グループの多くは、米国の国立衛生研究所National Institutes of Health (NIH) から資金提供を受けている。メイ卿が指摘するのは、NIHがその事業を支援する理由とは、NIHの係官が「無能」で、科学者たちの述べる研究正当化〔の弁〕をそのまま信じこんでいる〔つまり騙されている〕ということだった。「これは、やってはいけない事業だ。事はいたって単純な話。」と、メイ卿は言う。
 〔問題の〕実験〔複数形〕が示しているのは、1918年タイプの流感ウイルスが大自然の中で出現し得た原因が鳥〔に具わる〕ウイルス〔複数種〕の遺伝子交換と変異とに在った、ということである。河岡は、「インフルエンザ・ウイルス〔複数形〕は簡単に遺伝子交換をして新型のウイルス〔複数種〕を生成させる。だから、この種のことはいくらでも起こり得る。殊に、このようなウイルス〔複数種〕の多くが近年目立って出現しているからだ。」と言い、そんなウイルス〔群〕が「哺乳類に適応するようになる潜在力を蓄え、ひょっとすると人類のパンデミックを引き起こしかねない。」とも付け加えた。
 彼の研究は、ウイルスの拡散をいちじるしく容易なものにする特定の変異〔複数〕を、〔すでに〕確認している。しかしリプシッチは、それがサヴェイランス〔感染状況の継続的監視・観察〕におおいに役立つわけでないのは、同一の効果をもつ他のあまたの変異が考えられるからだ、と言う。「河岡さんたちが研究しているものに非常に近似したウイルスが自然の中で出現するチャンスは、極端に〔いつのことか分からない〕遠い先の話だろう。」とリプシッチは説明する。河岡の主張は、こうだ。河岡のチームだって、そんなことは十分自覚しているが、ウイルスを危険なものに変異させる内在的メカニズム〔を知ること〕こそ未来のパンデミック〔複数〕を防止するためにヨリ重要なことである、と。
 パリのパストゥール研究所にいるウイルス学者、サイモン・ウェインホブソンは、一旦なんらかの事故が起きてしまったとき、〔機能獲得GOF研究を支援してきた〕諸国政府や寄付財団がほんとうに〔リスクを取った〕覚悟どおり真面目に動くかどうか気がかりだ、と言い、そして続ける、「それは、狂気の沙汰、愚の骨頂だ。われわれが感染症と戦うときに必ず発揮してきた集団的な意思決定プロセスへの尊重が、いまや深刻に欠けていることの現れだ。もし社会が、〔「専門家」に毒されぬ〕賢い素人が、現に起きていることを理解するなら、彼らは、おい〔自分は天才とうぬぼれている〕落第坊主!君たちは何をしているのだ?と訊くだろう。」
 米国の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)の微生物学・感染症部長、キャロル・ハイルマンは、次のように言った。「この研究は、1918年スペイン風邪ウイルスの毒性の分子構成の仕組みmechanismsを理解する研究プロジェクトの一部として実施されました。NIHのピア・レヴュー〔専門家同士の評価〕は、研究が科学的に「賞賛に値する」ものと結論し、また〔この研究で〕得られた情報が、公衆衛生関係の諸機関が行なう、目下循環中の/ないし新規に現出しつつある/ウイルス諸系統を判定する作業を助ける上で、力を秘めるものであるとの結論にもいたりました。加えて、NIHは、この研究の全局面が適切なバイオ・セイフティの条件下で、かつ、適切なリスク緩和措置を伴いつつ、実施されたことを確認するとの最終決定も行ないました。」
                                                       以上

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